人それぞれ

先日の談春さんの「芝浜」が今まで聞いたのとはまた違った「芝浜」だったので、思い立って、速記本にあたってみることにした。とりあえず、資料室にあった『古典落語大系』の、三木助じゃない「芝浜」っていうのを読んでみた。解説を執筆している江国滋さんによると、三木助の「芝浜」は“文学的”な「芝浜」なのだという。それに対して、『古典落語大系』に収録されているのは、“落語的芝浜”ということで、志ん生師匠が病に倒れる前の口演に、多少手を入れたものとのこと。
そして、談春さんが演って見せてくれたのは、この二つの先人のものとも、師匠・立川談志のものともまた違う、談春的な「芝浜」だったというのを、改めて確認した。師匠十八番の根多を、師匠が演ったのとはまた違う噺として、新たな方向性を示した談春さんの「芝浜」は、現代の名演だと言っていいだろう。
落語というのは、生き物なんだなぁというのを、改めて知った気がする。