本格推理小説への入口

北村薫さんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01473954&volno=0000>『覆面作家は二人いる』</A>(角川文庫)読了。
解説で、宮部みゆきさんが指摘されているが、このシリーズの良介と千秋のコンビは、ちょうど「私」と円紫師匠のような、名コンビである。
設定は、探偵役が女性で謎を探偵に提示するのが男性と、ちょうど逆になっている。しかし、この探偵さんは”深窓の令嬢”でいながら、推理小説を匿名=覆面作家というペンネームで書く有望新人で、二つの人格を持っている。その担当編集者が、双子の弟・良介で、兄の優介は刑事である。
良介の先輩で敏腕編集者の左近雪絵、その姉の月絵といった脇役も、魅力的だ。

『秋の花』もそうだったが、殺人事件や万引きといった犯罪を犯してしまった人を、単なる”犯罪者”として描くのではなく”そうした犯行に及ぶには、それなりの理由があった”というスタンスを貫いているのが気持いい。その点について宮部さんは、北村さんのような小説を書きたいと考えている人へのアドバイスという形で、
<b>その作品を創りあげるあいだじゅう、可能な限り、力の及ぶ限り、「親切」であるように心がけるということ。
それは誰に対しての「親切」か? 無論、登場人物のひとりひとりに対してです。主役はもちろん、脇役のどんな小さな役回りしかない人物に対しても、作者は親切でなくてはならない。丁寧でなくてはならない。言葉足らずであってはならない。</b>
と書いている。

そして、北村さんを<b>本格原理主義者</b>と評す。これは、宮部さんと同じ年代のミステリ作家仲間の間では周知の事実のようだ。それほど、北村さんは本格推理小説を愛している。どんな題材や設定の小説でも、”本格”の心をないがしろにした作品は書かないということなのだろう。そのうえ、<b>きめの細かい親切さ、行き届いた気配り。</b>があるからこそ、北村薫の”本格推理ワールド”が成り立っているという。

わたし自身、本格推理ものはあまり読まないまま、ハードボイルドや冒険小説の方に入っていってしまったので、どちらかというと”本格”ものを敬遠するようなところがあった。しかし、北村さんの作品を読んでみて、最近では「”本格”モノもいいな」と感じている。