宮部版捕物帖は、新説「忠臣蔵」

宮部みゆきさんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01463368&volno=0000>『震える岩 霊験お初捕物控』</A>(講談社文庫)読了。

物語は深川の長屋で起きた「死人憑き」から始まる。
その謎に挑むのが、霊験お初こと岡っ引きの六蔵の妹・お初と、赤鬼と異名をとる与力・古沢武左衛門の長男で見習中の右京之介。
お初は、南町奉行根岸肥前守鎮衛直々に命を受け、市中で起こった不思議な出来事について、報告することになっている。根岸肥前守は、<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_result_book.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&kywd=%BC%AA%C2%DE&ti=&ol=&au=&pb=&pby=&pbrg=2&isbn=&age=&idx=2&gu=&st=&srch=1&s1=za&dp=>『耳嚢』</A>という書物にそれをしたためている。
また、お初には、人に見えないものが見え、聞こえないものが聞こえるという不思議な力が備わっており、時として、兄・六蔵の仕事を影ながら助けてもいる。
お初は、自身の不思議な力に導かれて、油屋の油樽の中に捨てられた女の子の遺体を見つける。

また、陸奥一関藩田村家の下屋敷で起きている、「夜泣き石」事件が発生。
奉行に連れられて田村家下屋敷に出かけたお初は、そこで一人の若い侍の姿と「りえ」という訴えかけるような声を聞く。そのことをきっかけに、一連の事件に、100年前の「忠臣蔵」が関わりを持っているらしいことがわかる。
忠臣蔵」とこの一連の事件がどんな関わりがあるのかを探るのは、主に右京之介だ。お初の不思議な力と、右京之介の地道な書類調査によって、二人は謎に迫っていく。

これは、新しい捕物帖シリーズであると同時に、新説「忠臣蔵」でもある。
100年後のお初と右京之介が、知りえる限りの情報を集めて、そこから推理していく「忠臣蔵」は、お初たちが馴染んでいる「忠臣蔵」とは、発端からして異なっている。最終的に、お奉行さまも含め、誰も「忠臣蔵」のこれが真相だとは言えないのだが。
また、折りに触れて当時の風俗が丹念に描かれており、江戸を散歩しているような気分にも浸れる。
続編にも期待したい。