「せんだんは双葉より芳し」かった(1)

宮部みゆきさんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01357087&volno=0000>『かまいたち』</A>(新潮文庫)読了。

かまいたち」「師走の客」「迷い鳩」「騒ぐ刀」の4篇を収めた短編集。
「迷い鳩」と「騒ぐ刀」が、<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01463368&volno=0000>『霊験お初捕物控 震える岩』</A>に連なる後日譚ならぬ前日譚である。
ちなみに、一冊にまとめるのあたって、加筆はされているそうだが、ここに収められた作品は、どれも宮部さんのデビュー前やデビュー後早い時期に執筆されたものだという。
「せんだんは二葉より芳し」かった。

お初が不思議な力を発揮した最初の捕り物である「迷い鳩」は、商家の主が原因不明の病にたおれ、その世話をしていた女中がつぎつぎに失踪する。たまたま道でみかけたその商家のお内儀の着物のたもとに、血がべっとりと滴るほどに染みているのが、お初には見えてしまう。
これが、謎の発端である。そして、御前さまこと南町奉行根岸肥前守鎮衛との出会いのきっかけともなっている。

「騒ぐ刀」は、八丁堀の同新で、入り婿の内藤新之助がひょんなことから入手した脇差をめぐる不思議な物語。

かまいたち」は、夜な夜な江戸市中を騒がす辻斬り”かまいたち”。たまたま辻斬りを目撃してしまった町医者の娘おようが、それがために巻き込まれる恐ろしい体験の物語である。この作品で、「霊験お初」や「茂七の事件簿」につながるものを、すでに感じる。

「師走の客」は、千住上宿にある宿屋「梅屋」に毎年、暮れになると必ずやってくる小間物屋の親父の、風変わりな支払いによって巻起こる悲喜劇を描いている。