こんな女友達がほしい

今日は、とても蒸し暑い一日だった。
朝、せっかくシャワーを浴びても、食事をしたり後片付けをしたりといった程度の作業をしても、汗が出てくる。
昼間も、外出するとジトっと湿気が粘り着いてくる感じだった。
それでも、つい10日前までのことを思えば、だいぶ過ごしやすいのだが。

川上弘美さんの『椰子・椰子』(新潮文庫)読了。
絵は、山口マオさん。お名前とイラストのおおざっぱな雰囲気から、てっきり女性のイラストレーターの方だとばかり思っていた。

先日、川上さんの作品は、内田百間と雰囲気が似ていると書いたが、ますますその感を強くした。
日常と非日常が隣り合わせとなった、不思議な味わいがある。
その味わいを目に見える形にしているのが、山口マオさんのイラスト。
巻末の対談を読むと、お二人はとても息のあった、お互いの世界観をわかりあったアーティストであり、共同の仕事を楽しんでいらっしゃったのが、伝わってくる。

特に印象深かったのは、春の章の「山本アユミミ」だ。
まず、主人公の名前が可愛い。
そして、彼女は「わたし」に宛てて
<b>あたしは旅に出ることにしましたどうぞさがさないでください(中略)西の湖のほとりに行くような予感がしてますだからといってどうぞさがさないでくださいさがす場合は鮎正宗かトモエヤのからすみ持ってきてくれるとなおいいですそれでは山本アユミミ</b>
という手紙を送ってくる。
その手紙を読んで、「わたし」はすぐに旅支度を整えて、彼女の好物の鮎正宗とトモエヤのからすみを買って、西の湖のほとりの宿へと向かう。
<b>あんまり何回も探さないでくださいと書いてあるのでほんとうに探さないでおこうかと思ったが、そんな意地悪なことはすまいと考え直して</b>。

こういう友達関係をもてる「わたし」と山本アユミミがうらやましいなと、感じた。
お互いわかりあっていて、でもベタベタとしない、そんな女友達。
キツいことを言い合いながら、それでいて、桜の花をふたりして眺めて
<b>「あと何回見ることできるかな、桜」</b>
なんて、「わたし」の予想どおりの台詞を言うアユミミ。
でも、そのすぐ後に、そんな台詞を笑い飛ばしてしまえるアユミミ。
こんな女友達が欲しくなった。