いつもの書店での、非日常

遅めの昼食をとりに出たついでに、いつもの書店に寄る。
しばらく、あちこちの棚を見て、文庫の棚から
中条省平『小説の解剖学』(ちくま文庫
福田和也『すべての日本人に感じてほしい 魂の昭和史』(小学館文庫)
●リチャード・ブローディガン『愛のゆくえ』(ハヤカワepi文庫)
を抜いて、レジ近くの新刊平台と棚をながめていた。
何册か気になる本もあったのだけれど、今日のところは文庫本のみで我慢しようと決めて、レジに向かおうとしたら、前に立っていた長身の男性がいきなり
「読者の方ですか?」と声をかけてきたので「出版社の人かな? それにしてはそんなに珍しい本を抜いたわけじゃないんだけどな」と思いつつ「はい、そうです」と答えながら顔を上げた。目の前に立っていた男性は、20代半ばくらいの青年で、オレンジの”ほぼ日育T”を着ていた。
さらに彼が「僕も・・・」と照れくさそうに言う。
それでやっと「そうか、育Tをわたしも着ているからか」と思ったものの、とっさに何を言えばいいのかわからず「あ、そうですね」と間抜けな答えしかできなかった。
「いやぁ、びっくりしました」という彼に「ほんと、びっくりしました」とまた、お間抜けな答えしか返せないまま、会釈をしてレジへ向かった。

このTシャツは、糸井重里さんの「ほぼ日刊イトイ新聞」のHPでのみ予約販売をしたもので、生産枚数自体がそんなに多くないということだった。今までに、このTシャツを着ている人に会ったのは、1回だけ。樋口可南子さんだけだ。遠くから「あ、育Tを着てる人だ! ずいぶん色が白くてスラっとした、すてきな女性だな」と思っていたら、樋口さんだった。

「読者の方ですか?」という声の掛け方からして、多分「ほぼ日」の”乗組員”の青年なのだろうと、後から気が付いた。そうとわかれば、もう少し気の利いたことを言えばよかった。実は、このTシャツ、普通のTシャツより生地が厚手で、ステッチが利いていて、結構お気に入りなのだ。もう一枚、オレンジも持っているが、こちらは休日専用。ちょっと近所まで買い物といったような時に、よく着ている。
生地が厚手な分、洗濯を繰り返すと、それなりに味が出てきて、いい感じになるのではないかと思う。糸井さんも、その辺を狙って、糸から選んだというようなことを、書いていた。
「気に入ってます」ぐらい言っておけばよかった!