知っているようで知らなかった文庫本の世界

岡崎武志さんの『文庫本雑学ノート』(ダイヤモンド社)読了。
岡崎さんの処女出版が、この本。とにかく、文庫本というジャンルにこんなに様々な顔があり、歴史があり、世界があるとは、驚きだ。
岡崎さんは、文庫本の歴史、各社の文庫の傾向と対策、文庫目録と解説の面白さと活用法、絶版文庫のという豊饒な世界、さらには文庫本の収納に至るまで、文庫と関わりがある様々な事柄に独自の視点で、しかも初心者にもわかりやすくまとめている。
わたしは、置き場所の問題から、文庫で読めるものは文庫でという程度の認識でしかなかったから、状態はいいに越したことはないが、古本屋さんや新古本屋で購入する場合、出版社や版はさほど気にしない。ましてや、すでに持っている作品を、たとえ他の版元の文庫で見かけたとしても、買うことはあまりない。
しかし、「文庫王」宣言をこの本の冒頭でされた岡崎さんは、珍しい版の場合はもちろん、同じ版を持っていても、お値段が安かったり、その本に愛着があったりすると、ついつい何冊も重複して買ってしまうことを、堂々と?述べておられる。さらに、文庫本を買う楽しさについて、様々な角度から述べられている。

わたし自身、最近の積ん読本の増え方を、客観的に見るとすでに、読むためというのは大義名分で、本を買うこと自体に喜びを見いだしているということに、気付く。今までは、その事実に直面することを避けるため、自分自身への言い訳として「読みたいから買うんだ」と言い聞かせて来た。これは、多分に我が両親の影響が強いと思う。「そんなに読んでいない本を持っているのに、また買って来たの?」と、実家で暮らしていた頃、よく言われた。しかし、実家から独立して以来、そのようにわたしの増える一方の積ん読本に歯止めをかけようとする人は誰もいない。それでもやばり、どこかで後ろめたい気持ちはあるらしく、自分に向かって言い訳をしている。もちろん、買う時は読みたい本を選んでいるのだが、物理的な読書量と、次々に自分の興味が広がっていくのに従い読みたいと思う本が増える速度との釣り合いが取れないのだ。
「本を買うことが楽しくて、買っているんだもん」とこの際、わたしもカミング・アウトしてしまえばいいじゃないか、と思えて来た。
それにしても、置き場所がね・・・。