「読みたい」虫がムクムクと

今日は、久しぶりに晴れ間が覗いた。明日以降、このままいい天気がもてばいいのだが。

このところ、読書がはかどらない。他に考えなければならないことがあるせいか、本を読んでいても、あまり集中できない。それでも、読みたい本自体はあるのだが、そう思って手に取ったはずの本を読み進むことがなかなかできないのだ。
こういう時は、読みかけの本は読みかけの本で、まったく気分を変えるために、違った傾向の本を読んでみるのがいいのかもしれない。
というわけで、本棚を漁ってみる。
何冊か、パラパラと目次をめくってみたり、拾い読みをしているうちに、関川夏央さんの『本読みの虫干し』(岩波文庫)を読み始めた。

この本で関川さんが取り上げてるのは、サブタイトルに「日本の近代文学再読」とある。
目次を見て行くと、ほとんど知った名前ばかりなのだが、関川さんの視点を通すと、「なるほどね」「そうなのか」に溢れている。
たとえば、志賀直哉の『小僧の神様』の仙吉が、向田邦子さんの『あ・うん』につながっていたということ。(「大正バブルと社会の『改造』」 志賀直哉小僧の神様』)
芥川龍之介の『舞踏会』が、ピエール・ロティの『江戸の舞踏会』を下敷きにした作品で、その後、三島由紀夫の『鹿鳴館』、山田風太郎さんの『エドの舞踏会』へと受け継がれ、成熟されて行ったということ。(「奇妙なまでに懐古的な空気」 芥川龍之介『舞踏会』)
など。

新1つの項目が、新書でわずか3ページにまとめられた中に、こうした情報がつまっていて、そこで触れられている作品が読みたくなる。こういう刺激に満ちた本に触れると、また「読みたい」の虫がムクムクと頭をもたげてくる。