「都風流」

5月歌舞伎座千秋楽の「かっぽれ」が見られなかったのは、山野楽器でこのCDを買っていたから。学生時代、大好きだった(といっても、当時既に故人だったので、レコードなどでしか聞いたことはなかった)吉住慈恭さんの演奏。
助六」と「都風流」が収録されている。レコードも、同じジャケットだった。
詳しい人にお話しを伺った折に「東芝での録音は慈恭・浄観になってからだからねえ。コロンビアの全集は小三郎・六四郎コンビの、脂が乗り切った録音だから、やっぱりいいねえ」と言われたが、当時、コロンビアはおろか、東芝の全集ですら、店頭からは消えていた。
そんな中、「助六」と「都風流」は、舞踊の演し物としても需要があったせいか、邦楽を多く扱っているレコード店では、まだ入手できたのだった。
先ほど「芸能花舞台」で、高濱流光妙さんの素踊りで「鳥羽の恋塚」を見ていて、急に慈恭さんの唄が聞きたくなったのだった。
長唄を、歌舞伎や舞踊の伴奏音楽から、独立した音楽として鑑賞するものに変えたのが、吉住小三郎・稀音家六四郎とされている。このコンビによる新作は、能から題材を取ったものも多く、ちょっと古曲浄瑠璃っぽい匂いもする。
そういえば、同時代の人の随筆かなにかを読んでいたら「小三郎は、荻江を取り入れた」という意味の文章を読んだ。さあ、誰の文章だったかしら?
「鳥羽の恋塚」「熊野」「有喜大尽」「紀文大尽」など、好きな曲はたくさんあるのだが、人から頂いたり放送を録音したカセットテープは、どうしただろう?
ちなみに、この「都風流」の詩は、久保田万太郎