”いつもの本屋”で買った、大切な1冊(1)

いつもの本屋”閉店まで、今日を入れても、いよいよあと5日となってしまった。
閉店後のことを考えると、ひたすら寂しいし、不安だ。
もうすぐ、このお店がなくなると思うと、ついつい、まとめて目に付いた本を買えばいいものを、毎日行っては1冊ずつ買ってしまう。
だんだん、棚が寂しくなっているのは、隠しようもなく、それを店長さんの知恵で少しでも見せないようにという配慮が感じられて、余計に寂しい。

もう、残りの日数も少ないので、新刊はそうそう入荷しないだろうと思っていたら、今日は、嬉しい本をここの平台に見つけた。
大友浩『花は志ん朝』(ぴあ)だ。
著者は、「東京かわら版」という落語を中心とした笑芸関係の月刊情報誌の編集長を勤めた方だ。この8月いっぱいで編集長の職は辞されたとのこと。
東京かわら版」9月号で、この『花の志ん朝』上梓のことがコラムになっていて、出たらぜひ読みたいと思っていた。しかし、この本を、いつもの本屋で買えるとは思っていなかったので、芸能・芸術関係の本が並ぶ平台に1冊だけ置かれているのを発見した時は、大袈裟でなく、本当に嬉しかった。

「本なんて、コンビニで買おうが、大型書店で買おうが、古本屋で買おうが、同じじゃないか」というのが、大方の見方だろう。しかし、こういう本はあそこの本屋で、と思うのが、本屋好き、本好きの性とでも言おうか。
その楽しみがもう、無くなってしまうと諦めていた矢先だけに、余計に嬉しかったのだ。
歌舞伎や落語といったジャンルの本は、小さな本屋さんではなかなかお目にかかれないと思っていたら、数は多くないが、センスのいい人のきちんとした取捨選択の後に、この棚に並べられているのだろうな、と思える本が、ここにはいつも並んでいた。
小林信彦さんの『名人 志ん生、そして志ん朝』(朝日選書)がいち早くならんでいたのも、この本屋さんだった。

また、シブい本もきちんとフォローしてくれていた。
たとえば、坪内祐三さんの晶文社の新刊や、川本三郎さんの本も、すぐに平台に並んでいた。さらに、この規模の本屋としては珍しく、ちくま文庫講談社文芸文庫も数はさほど多くないが常備されていた。