本で「歌舞伎三昧」

先日の腰痛以来、ひさびさの読書三昧の一日を送った。
ゆうべから読み始めて「もったいない」と思いながらも、面白さについ引き込まれて読み終えてしまったのが、戸板康二<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=02112030&volno=0000>『小説・江戸歌舞伎秘話』</A>(扶桑社文庫)。
”名探偵雅楽”シリーズは、大方、歌舞伎見物に通っていた当時に読んでいたが、こちらの方はその頃、読んでいなかった作品だ。

雅楽シリーズ”とは趣向を変えた短編集だ。どれも、江戸時代に、それまでの演出や世界観、扮装といった”型”を破った”工夫”について、その真相を推理する。謎解き役は、一切登場しない。また各作品の最後に、その演目についての、客観的事実がきちんと説明されている。

劇評家としての戸板先生ならではの知識や洞察と、推理作家としての視点が見事にあいまっている。実在の役者や作者などと、戸板先生が生み出した架空の、それでいて「いかにも」という登場人物が織りなす”秘話”は、解説で小泉喜美子さんが戸板先生ご本人の「全部、フィクションなのはもちろんです」という言葉をひいてくださっても、なお、これが”真相”なのでは?と思うほど、戸板先生の”推理”が冴えた作品ばかりだ。

今日でもしばしば劇場でかかる演目を題材として、その粗筋や、歌舞伎の仕組み、仕来りなどが、物語の筋のなかで巧みに折り込まれているので、あまり馴染みのない人にも、充分楽しむことができるであろうところが、また、お見事である。

この後、立て続けに、松井今朝子<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01989165&volno=0000>『仲蔵狂乱』</A>(講談社文庫)と南原幹雄『謎の団十郎』(講談社文庫)を読んでしまった。
劇場に行ったわけでもないのに、今日は「歌舞伎三昧」を楽しんだ気分だ。