名探偵雅楽と竹野を継ぐ、名探偵コンビとの出会い?

かねたくさん、お薦めの、北村薫さんの作品<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01053215&volno=0000>『空飛ぶ馬』</A>(創元推理文庫)を読み始めた。

文学部の女子学生”わたし”と、噺家・春桜亭円紫が、不可解な謎に挑戦し解き明かしていく小説。
裏表紙に鮎川哲也さんが寄せている文章によると、「殺人やことさらな事件がおこらな」いらしい。
第一話「織部の霊」では、二人の共通の恩師である加茂先生の、不思議な幼児体験の謎を解くお話し。
”わたし”と円紫さん、それぞれの人物紹介を交えながら、ストーリーは進んでいく。

鮎川さんが紹介しているように、第一話を読んだ限りでは、本格推理小説には欠かせない謎と論理の要素が、ことさらな”事件”抜きで展開されていく。
しかし、”謎解き”の面白さは充分に堪能できる。

トビラでは、宮部みゆきさんが、北村さんの『空飛ぶ馬』は、ヒロインと探偵役の円紫師匠とのやり取りの中から「日常にひそむささいだけれど不可思議な謎のなかに、貴重な人生の輝きや生きてゆくことの哀しみが隠されていることをおしえてくれる」という言葉を寄せている。

宮部さんもまた、物語の作り方こそ違えど、生きて行くことの輝きや人生に潜む哀しみを描くことの上手い作家だと、わたしは思っている。
時代ものであれ、現代ものであれ、”世界”はさまざまでも、そこで描かれる”物語”には、いつも人間を見つめる暖かな眼差しがあるのが、宮部作品の魅力だと。

織部の霊」で紹介される「わたし」のプロフィールのなかに、古本屋めぐりが趣味とある。
わたしの行く先々に「古本屋」が出てくるのは、やはり”芋づる”読書の功徳だろうか?
「わたし」が今後、どんな古本屋でどんな本に出会うのか、という興味もできた。

まだ一つしか読んでいないので、あくまでもこれはわたしの勘なのだが、戸板先生の”名探偵・雅楽”シリーズでの、中村雅楽と新聞記者の竹野という名コンビを継ぐのは、「わたし」と円紫師匠かもしれない。
そのせいか、雅楽シリーズも、再び読みたくなってきた。