グォ・ヨウは中国の竹中直人?

久しぶりの映画館での映画見物は、川本三郎さんのオススメがきっかけ。
数年前の中国映画祭は、全作品制覇したくらい、中国の映画は好きだ。
とくに、普通の人々の暮らしや、中国の伝統芸能の世界が描かれているような作品に惹かれる。監督としては、チャン・イーモウとかチェン・カイコーなどが、好きだ。
と、久々に重いお神輿を挙げるのには絶好の条件が揃って、渋谷文化村ル・シネマで上映中の「活きる」を見た。

まず、映画が始まって一番最初に思ったのが、主人公の福貴を演じているグォ・ヨウという俳優が、竹中直人にそっくり!ということ。
この印象は、見終わっても、変わらなかった。顔や体系の雰囲気はもちろんなのだが、ちょっと暗くて、ユーモアもあって、でもしたたかで、という感じが、竹中直人っぽいのだ。「さらば、わが愛 覇王別姫」や「スパイシー・ラブ・スープ」にも出ているらしいのだが、あまり印象に残っていない。
そして、コン・リーが演じる福貴の妻・家珍は、映画の前半と後半での印象が、ガラっと変わる。前半は、どちらかというと「紅いコーリャン」の時と同じ雰囲気。これは、髪形のせいもあるかもしれない。ところが、髪をボブにしてからが、とてもいい。生き生きとしていて、ちょっといたずら好きで、ある事件が起きるまでは、とても明るくたくましいお母さんという、役柄にピタリとはまる。

福貴は、なによりも家族が大事、という人で「これからは、もっといい時代になる」という台詞が何回も出てくる。
内戦から文革という激動の時代を、家族を守りながら生き抜くために、政治や思想といったことには関わり合わず、その時、世間で正しいとされることを目立たないように守ることで切り抜けていこうとする、庶民のたくましい生き方が、福家を通して描かれている。
そして、福貴が得意とする”影絵”の映像と音楽が、作品の要所要所を締めている。そのあたりの計算が、さすがは、チャン・イーモウだ。

福貴一家に振りかかる災難。それでも福貴は世間に逆らうことなく、出世も望まず、お湯を沸かして配る仕事に精を出す。
なのに、またしても悲劇が・・・。

笑いと涙と感動にあふれた、中国の一庶民家族を描きながら、文化大革命の問題点を問う、意欲作だった。