せめて、好きな本くらいは読みたい

荒俣宏さん編著の<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01363726&volno=0000>『大都会隠居術』</A>(光文社文庫)読了。

”隠居の達人”たちの著作を、荒俣さんが集めて編んだアンソロジー
谷崎潤一郎永井荷風が2編ずつ、その他に安藤鶴夫大岡昇平水木しげる内田百間、里見とん(弓偏に享)、幸田露伴宇野浩二古今亭今輔宇野千代青山二郎北大路魯山人稲垣足穂といった方々の作品と、荒俣さんによる「都会の隠者列伝」などが収録されている。

里見とん、青山二郎、足穂などは、名前は知っていても作品は読んだことがなかった。こういう未知の人の作品に触れることができるところが、信用するに足る人の手になるアンソロジーの良いところだろう。

荒俣さんは、”隠居”を目指すのは男性だけと考えていらっしゃるようだが、わたしのような”オヤジ化”した女も、いまや”都会の隠居”を目指す時代なのだ。
それにしても、宇野千代さんの「青山二郎のはなし」を読んでいると、吉田健一白洲次郎といった人を思い浮かべてしまう。もっとも、吉田健一さんは『東京の昔』などから受けたイメージだし、白洲次郎さんについては、先日読んだ<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01363726&volno=0000>『ひかない魚』</A>の中で語られた白洲さんが基準なので、本当のところ、どうなのかはわたしには判断できないのだが。

宇野千代さんが描く青山二郎という人は、定職をもたないまさに”高等遊民”という言葉にふさわしい人に思える。しかし、白洲さんも吉田さんも、お仕事をしていたわけで、荒俣さんのイメージする”隠居”とか”隠者”とは、ちょっと違うのだろう。

親から受け継ぐ財産もないし、今のままでは遊んで暮らしていけるほどの蓄財も難しいわたしとしては、せめて、好きな本くらいは読むことができる今の暮らしが続けられることを望むとにしよう。