いしいひさいちさんは、読み巧者薦め上手

いしいひさいちさんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=02092968&volno=0000>『ほんの本棚』</A>(創元ライブラリ)読了。

「しおりでGO! GO!」と「ほんの一冊」、それに「お手伝いネコの読書日記」「しおりの編集日記」が集まって『ほんの本棚』となっている。
どれも、いしいさんらしく、面白い。
「ほんの一冊」のトップバッターは、いしいさんご自身による『ほんの本棚』。
<b>作者本人が自著を評して良いものだろうか。</b>
と言いながら、ダジャレに紛らせてしっかり褒めてしまうあたりは、お見事。

なにしろ、「ほんの一冊」で取り上げられている本の幅広さ、そしてタブチコースケ先生、広岡達三先生、藤原ひとみ先生という3人のキャラクターに、それぞれの持ち味で書評させているところが、この作品のミソだろう。
取り上げられた本や、それに対するコメントで気になったものを見ていくと、なぜか藤原先生ご担当の本ばかりだった。

中野由貴・出口雄大宮沢賢治のレストラン』(平凡社)は、宮沢賢治の作品に出てくる食べ物を紹介しながら、賢治の世界を再現した本だそうだ。賢治の単なる高級好みではない、食いしん坊ぶりがわかるのだという。すでに「ビジテリアン」(ベジタリアン)という言葉を賢治が使っていたというのに、驚いた。

フィリップ・モウルド『スリーパー 眠れる名画を競り落とせ!』(文藝春秋)では、オークションに出品されている”眠れる名画”を発掘して、高く転売することを商売とする人々の生態を、イギリスの美術商が書いたノンフィクション。そんな商売があることすら、知らなかったが、なかなか面白そうな本だ。

この作品を読まなければ知らなかった、面白そうな本が、他にもいろいろと取り上げられている。
橋爪紳也『大阪モダン 通天閣と新世界』、ミヒャエル・ユルクス『ロミー・シュナイダー事件』、富岡多恵子『大阪センチメンタルジャーニー』
風野真知雄『西郷盗撮』などがそうだ。
そして、木にはなっていたけれどまだ積んだままの本、購入を見合わせていた私にとってはお馴染みの作品も、いしいさんの書評を読んで、「やはり読もう!」という気分になった本が少なからずあった。

またまた”積ん読本の素”に出会ってしまったということだ。