山本周五郎・藤沢周平の次世代を担うのは宮部みゆきだ

宮部みゆきさんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01581824&volno=0000>『幻色江戸ごよみ』</A>(新潮文庫)読了。

どうやら昨年の夏、NHKの金曜時代劇で放送されていた「茂七の事件簿 ふしぎ草紙」の原作らしい。
一話完結のドラマで、原田芳雄さんが出ていらっしゃったのと、古今亭志ん朝さんがナレーションを担当されていたのとで、全話ではないが、時折見ていた。
読み始めてしばらくは気がつかなかったのだが、第六話「まひごのしるべ」を読んでいて「あれ、どこかで聞いたことがある話だな・・・」と思い、読み進めていくうちに「茂七の事件簿」で見たエピソードだったと、思いだした。
他に、「だるま猫」「神無月」「侘助の花」は、見た記憶がある。

先日読んだ、中野翠さんの『毎日一人はおもしろい人がいる』(講談社)でも、中野さんが時々見ていらっしゃるドラマだと、書かれていた。中野さんは、志ん朝師匠のナレーションと、茂七(高橋英樹さん)の子分役で出演していた仁科貴(川谷拓三さんの息子さん)について、触れていらっしゃった。
そう言われてみると、確かに父上によく似た愛嬌のある顔だちと雰囲気が感じられた。

宮部さんの小説は十二話あって、「捕物帳」形式ではないし、一話ごとにスタイルも違っている。だから、ドラマにしやすいエピソードを、茂七という岡っ引きの謎解きスタイルに換骨奪胎したのではないかと思われる。

<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=01463368&volno=0000>『霊験お初捕物控』</A>を読んで、池波先生の後継者は間違いなく宮部さんだと感じたが、山本周五郎藤沢周平亡きあと、江戸の庶民ものという系譜をリードしていくのも、宮部さんに違いないと確信した。

江戸という町に生きた人々の、日々の暮らしを丁寧に描きながら、その中で時に笑い、泣き、哀しみ、悦び、怒り、嘆き、それでも生きていくたくましさ、家族の絆、人情、などなど様々な姿が、細やかな作者の視線を経て浮き上がってくる。

宮部さんの幅広さには、作品を読むたびに驚き、そして感心する。