元祖・水の都は京都だった(1)

ワールドカップの影響で、夜はサッカー三昧という生活を送っていたが、ここへきて試合と試合のインターバルが入ったので、夜のTVライフも平常に戻りつつある。
とはいえ、久しぶりにNHKスペシャルを見た。
「アジアの古都」というシリーズの最終回「京都」だ。
京都は、「水の都」であるというのが、番組の主旨。
京都の水にかかわるさまざまな人々を紹介しながら、京都がなぜ「水の都」なのかということを解き明かしていく。

和菓子や友禅染め清酒など、水とかかわりの深い仕事は数々あるが、番組の中心に据えられていたのが、「鴨氏」という京都千年の都の水を司ってきた家の末裔である鴨脚(いちょう)家と、創業以来同じ場所で豆腐を作りつづけてきたお豆腐屋さん、そして京都の地下水を研究している、関西大学の楠見教授。

京都といえば湯豆腐や湯葉が思い出されるほど、豆腐は名物であり、それは京都の水がおいしいからだ、ということは何となく知っていた。しかし、このお豆腐屋さんの水は、地下鉄工事の影響で、一度は危機に瀕したのだという。
周囲の同業者は、廃業したり水道水に切り替えたりしたのだそうだが、このお豆腐屋さんは、地下鉄よりも深いところまで井戸を延ばし、代々守りつづけてきた豆腐の味を今に伝えているという。
もう、70歳をゆうに超えたと思われるおじいちゃんが、自転車で引っ張るリヤカーのような車に豆腐と油揚げを乗せ、京の路地裏を売り歩く景色は、さすがに京都らしい風情を感じる。

こうした京都の水事情を、最新の科学を駆使して調べているのが、関西大学の楠見教授だ。ボーリング調査や市と共同の地盤調査を経て、京都の地下水がどのように分布しているのかを、調べている。
楠見教授の調査の結果、京都盆地は、その地下が岩盤で覆われているため、周囲の山に降った雨水が、満々とたたえられており、その出口は天王山しかないため、夏でも水が涸れ難いということがわかっているのだそうだ。
そして、そのことを直感的に知っていたのが、平安京を造営した人々なのだということが、京都御所・下賀茂神社神泉苑という、京都の水を司る3つの場所を、楠見先生が作成した地下水の分布図に重ね合わせると、明らかになる。