謎の稲荷寿司屋の親父の正体は?!(1)

宮部みゆきさんの<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_result_book.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&kywd=%BD%E9%A4%E2%A4%CE%A4%AC%A4%BF%A4%EA&ti=&ol=&au=&pb=&pby=&pbrg=2&isbn=&age=&idx=2&gu=&st=&srch=1&s1=za&dp=>『初ものがたり』</A>読了。

この一連の物語を執筆するきっかけになったのが、夏の清澄公園だったと、
<b>目には青葉 山ホトトギス 初鰹</b>
という俳句とともに、PHP文庫版のカバー見返しで、宮部さんは述べておられる。
6つの物語には、季節を象徴する「初もの」が登場する。
そして、その「初もの」を見事に料理するのが、夜っぴて開いている稲荷寿司の屋台の親父である。この得体の知れない親父が、この一連の物語の縦軸として、読者の興味をより一層引っ張っていく原動力となっている。

当時、稲荷寿司というのは、屋台で商われる食べ物であるということを知らなかったので、そのことでまず驚いた。
何となく、稲荷寿司というのは、大阪あたりの食べ物かな?と思っていたのだ。宮部さんの説明によると、当時の稲荷寿司の屋台は
<b>たいていの稲荷寿司売りは、屋台といっても屋根なしで、粗末な台の上に傘をかかげただけで商いをしているものだ。その場でつくって出すわけでもなく、つくり置きしたものを並べている。</b>
のだそうだ。
歌舞伎の舞台などで見る屋台といえば、いわゆる「二八蕎麦」だ。これは、親父が担いで動かせるようになっていて、客は立ち食いか、その辺に腰掛け変わりになるものがあれば、そこに腰掛けるといったものだから、大方、稲荷寿司屋もそんな感じであったのだろう。

しかし、『初ものがたり』に登場する稲荷寿司屋は、きちんと屋根があって、腰掛けもあり、煮炊きができるようになっているという。
そして、この親父は、寒い季節には「蕪汁」や「すいとん汁」「小田巻き蒸し」を、春には「白魚蒲鉾」「蜆汁」を、青葉の季節には「鰹の刺身」、秋には「秋刀魚」や「柿羊羮」と、読むだけで食べたくなる料理を作って出す。
そして、その「初もの」が、主人公の岡っ引き・茂七を喜ばせるのだが、そのあたりの描写は、大好きな池波正太郎先生の『鬼平犯科帳』『剣客商売
『梅安』などを彷彿とさせる。