謎の稲荷寿司屋の親父の正体は?!(2)

<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_result_book.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&kywd=%BD%E9%A4%E2%A4%CE%A4%AC%A4%BF%A4%EA&ti=&ol=&au=&pb=&pby=&pbrg=2&isbn=&age=&idx=2&gu=&st=&srch=1&s1=za&dp=>『初ものがたり』</A>は、いわゆる岡っ引きの茂七親分の「捕物帳」なのだが、そこに描かれているのは、江戸の庶民の暮らしである。
謎解きの面白さと、人情ものの温かさ・切なさが見事に融合している。
登場人物一人一人の描き方に、宮部さんという作家の愛が感じられると同時に、宮部さんご自身の人間への温かい眼差しが、茂七親分をはじめとする登場人物たちの台詞に鏤められていて、哀しい物語にも「救い」が用意されているところが、宮部さんがこれからの「人情もの」をリードしていく書き手だと、わたしが確信する所以である。

特に、心に残った言葉を、最後に引用させていただく。
稲荷寿司屋の親父が、茂七親分に「白魚蒲鉾」の作り方を説明した折りに、ふと漏らす言葉である。稲荷寿司屋になる前は、侍であったと思われる、いい年をした親父がこんなことを言うなんて、ちょっといいではないか。
<b>「でもあっしは、白魚を生のまま食うのがどうも嫌いでして」(中略)
「そんなことを言い出したらきりがないんですがね」と、親父は笑った。「鰹だって鰆だって、みんな同じなんだから。しかし、どうも白魚は苦手なんですよ。ああ俺は生き物を食ってる、殺生をしてるってことを、まともに感じちまうんです。」</b>

ちなみに、この稲荷寿司屋の親父の正体は、明かされないまま終わっている。ということは、続編が読めるということなのだろう。愉しみは先にとっておこう。
また、昨日からNHK総合テレビで「新・茂七の事件簿」の放送が始まったのだが、録画予約を失敗してしまったので、ちょっとがっくりしている。