音のない世界から聞こえてくるもの(2)

『音のない記憶』の裏表紙に使われている、道路のまん中にちょこんと1匹の犬が座っている写真、道ばたで七輪で干物を焼いている少女、井戸端で洗濯板を使っている少女、学校帰りにランドセルや傘を放り出して遊ぶ男の子たち、返還前の沖縄で撮られた写真の数々。
どの子もみんなキラキラとした目をしている。
決して豊かとはいえない暮らしの中で、親や兄弟と助け合いながら懸命に生きている、そんな健気な姿が、すがすがしい。
音のない世界である井上さんの写真からは、耳を澄ませてみるとそこに切り取られた街や、人々の暮らしの息遣いがたしかに聞こえてくる。

この本を読みながら、井上さんの写真集『思い出の街』や『あの頃』を見てみたくなった。