こんな本屋さんがあったなら(1)

川辺佳展さんの『街の本屋が「カア!」と啼く』(幻堂出版)読了。

川辺さんは、神戸・元町で「烏書房」という書店を営んでおられたそうだ。
京都在住の友人から、その店のお名前だけは聞いたことがあったが、実際にお店を訪ねたことはない。
いわゆる”ベストセラー”ではなく、ご主人が面白い、読んでほしいと思った本をセレクトして置いている書店だということを聞いていた。
関西方面に出かける折りがあったら、ぜひ一度訪ねてみたいものだと考えていたが、根がズボラな性格ゆえに、ついに訪ねる機会を作れないまま、閉店されたということを聞いて、残念に思っていた。

その「烏書房」のご主人が本を書かれたと聞いて、書店で購入したのが3か月ほど前のことだったろうか。
本と言うのは、もちろん買ってすぐに読む場合もあるのだが、手に入れただけで安心してしまって、そのまま積ん読の山に埋もれてしまうことも、しばしば起こる。この本も、しばらく積ん読本の中にまぎれてしまっていたのだが、他の本を探していて「そうそう、これ、あったんだ」と思って、手の届きやすい場所に置き直したばかりだった。

東京でのサラリーマン生活に区切りをつけて、神戸市西区に最初のお店を開くに至ったいきさつから、関西人らしい(と、東京モンは思うのだが)ユーモア溢れる語り口ながら、苦労続きの12年間の「チャンネルハウス」時代にも触れられている。
この部分は、主に書店経営のイロハも知らず、いきなり始めた店の資金繰りに奔走する川辺さんの生活がメインになっている。
開店から12年目、本屋という仕事の面白さに目覚めた川辺さんは、売り場面積80坪・家賃63万円という店が「身の丈に合わない」と感じる。
そんな川辺さんが、「チャンネルハウス」を閉めて、小さくてもいいから自分が好きな本、お客さんに読んでほしいと思える本を売る店で出直そうと決心して選んだのが、神戸の中心・元町だった。