しみじみと、不思議な味わい

台風がいよいよ接近しているようだ。
雨が降ったり止んだり、時に強くも降る。
午後、TSUTAYAにCDの返却期限なので、買い物がてら出かける。
こんな天気でも、そこそこ人がいて、都会というのは不思議なところだと思う。

川上弘美さんの『竜宮』を読む。
ちょうど半分の4作品を読み終わったところで、今のところ一番好きなのは、「狐塚」だ。

油揚げが好きで、時折「ケーン」と鳴く93歳の正太と、その正太のもとへ週に2回、ホームヘルパーとして通う私の物語。
正太は、一生独身を通した男で、一人暮らし。私は二度の離婚、それも夫に逃げられた53歳の女。正太から「君の裸を見せて」と言われて「掃除が終わったらね」と答える私。
私は正太のことが好きだ。正太も私が好きだ。でも二人とも、好きって、どういうことなんだかよくわからない、という。

そんな二人の、決していわゆる”老いらくの恋”ではない関係がしみじみと不思議な味わいをかもし出していて、わたしは好きだ。