『作家の値うち』の使い方(1)

福田和也さんの『「作家の値うち」の使い方』読了。

『作家の値うち』がわずか1週間で増刷がかかった(わたしが持っているのは、第2刷)ことからもわかるように、相当、話題になったと同時に、読まれた本であったことも確かなことだ。
全体は、大きく四部から構成されている。『作家の値うち』への反響から執筆された原稿や、雑誌対談、さらにインタビュー記事が収録されている。
この本を買う決め手になったのは、鹿島茂さん(「諸君!」)、中野翠さん(「ダ・ヴィンチ」)との対談が収められていたからだ。

巻頭に収録されているのが青山ブックセンター本店で行われた「『作家の値うち』ベストセラー記念講演会」の内容を書き起こしたもの。福田さんが、その冒頭で
<b>たしかに私の本としては、あるいは批評の本、ブック・ガイドとしてはかなり売れたほうに入りますが、それでも『脳内革命』とかに比べると二十分の一ぐらいしか売れていないので、たいしたことはありません(笑)。</b>(P.8)
と、聴衆の笑いを取りながらも、ベストセラーを巡る状況を皮肉っておられるのが、印象的だ。
本の刊行が2000年4月で、この講演会が7月ということで、3か月の間に芥川・直木賞の選考が行われたこと(芥川賞町田康氏、直木賞金城一紀氏と船戸与一氏のダブル受賞だった)を話の枕に、『作家の値うち』出版後に起きた、さまざまなリアクションと、それに対する福田さんの意見が、ユーモアたっぷりな語り口で、しかし真剣に語られている。
この話の中で、面白いなと思ったのが、純文学の作家は評価が低かったこと自体に怒ったけれど、エンターテイメント系の作家たちは取り上げられなかったことに怒ったというリアクションだ。
そのへんの違いは、作家としての意識の持ち方の違いを端的にあらわしていると、福田さんは分析しておられる。