本の話はつまらない?

仕事が終わってから、仕事関係の人たちと呑みに行った。
その帰り道で、わたしに「『海辺のカフカ』早く買って、読んで、貸してよ」とのたまわれていた方が、「もうすぐ上巻読み終わるから、そしたら貸してあげるよ。いやあ、今度もいいよ、村上春樹」と唐突に言い出した。すると、その話を聞いていたもう一人が、「僕が読んだ村上春樹の小説は『スプートニクの恋人』が最後かな」と言い出した。「村上春樹の小説って、読んでいる時はすごく面白いんだけど、後になってみるとよくわかんないんだよね」とも。

かつては、文学青年だったんだろうな、というお二人のそういう会話を聞いていると、普段、本の話など滅多にしない”おとうさん”たちの会話に出てくる作家が、果たしてどれぐらいいるだろう? とふと考えた。
村上春樹さんですら、他の人たちは無関心なのだから、あとは推して知るべしだ。
もしかすると、内田康夫さん、山村美紗さん、西村京太郎さんといった2時間ドラマの原作者の常連さんなら、反応する人が多少はいるのかもしれないが、わたしの方が、この方々の作品はほとんど読んでいないので、何も語れない。

わたしに本を貸して下さると言っていた方は、今でもそこそこ本は読んでいる人で、時々、昼ごはんを食べながら澁澤龍彦さんや村上春樹さんの作品について、話したりする。斎藤美奈子さんが、小林秀雄賞を受賞したことをわたしに教えてくださったのも、その方だ。しかし、仕事の途中でそんな雑談を交わしていても、そこに参加してくる人はいないし、ほとんどの人が「誰それ?」「何それ?」という空気が漂うだけだ。

面白かった本の話を、心置きなくできるのは、どうやらネットの世界だけのようだ。