闇から覗く顔

高橋克彦さんの『闇から覗く顔 ドールズ』(中公文庫)読了。

『ドールズ』の続編にあたる作品。『闇から覗く顔』は短編連作で、毎回、古本屋の主人・恒一郎とその姪の怜、恒一郎の恋人・香雪らの周囲で起こる事件を描いている。
前作では、怜の身に起きた異変を解明するための物語だったが、今回は、怜の身に起こった異変を周囲が受け入れつつ、事件を解決するという構図になっている。今回も、恒一郎の専門知識と調査力が、事件解決に一役買っている。

福田和也さんは、『ドールズ』に71点を、『闇から覗く顔』に58点をつけている。両方読んでみて、わたしも確かに『ドールズ』の方が、より優れた作品だと思う。設定そのものの面白さ、わけのわからない出来事にオロオロする怜を巡る大人たちと、異変の原因を解明する過程の描き方など、単なるホラーや推理小説を超えた面白さがある。
それに比べてしまうと、『闇から覗く顔』の方は、ちょっと毛色の変わった推理小説という感は否めない。
しかし、これはこれで楽しめる短編集であった。