『迷惑旅行』は楽しい道中記

今日はあまり風も吹かず、穏やかな一日だった。

午後から、原宿へ。相変わらず休日の原宿は、すごい人出だった。いくつか用事を済ませて、BOOK OFFへ。普段は時間がなくて、文庫の棚しかチェックできないので、まずは単行本をチェック。しかし、棚の配置がもう一つわかっていないので、探し物を探しきれない。そんな中で、戸板康二先生の『慶応ボーイ』(河出書房新社)という本を見つけた。戸板先生ご自身が、慶応ボーイだったことを思い出した。様々な雑誌に発表された短編小説をまとめたもので、1989年に刊行された本だ。

それから、いつもの文庫棚へ。ちくま文庫の棚で、三遊亭圓朝さんの『怪談牡丹燈籠 怪談乳房榎』を、その他吉行淳之介さんの『私の文学放浪』(講談社文庫)、嵐山光三郎さんの『チューサン階級の冒険』(角川文庫)、『朝日新聞の記事に見る[明治][大正]恋愛と結婚』(朝日文庫)など探していた本が見つけられた。
中でも、山口瞳さんの『迷惑旅行』(新潮文庫)は、山口さんと親友のドスト氏の旅行エッセイということで、口絵にカラーの山口さんが旅先で描いた絵も4点収録されていて、うれしい買い物だった。
さっそく、帰りに寄ったオー・バッカナルで、最初の「川の松永、海の鞆」を読んだ。これは、広島県への旅で、ドスト氏の親友であるイマちゃんとの三人旅。
福山を中心に、松永と鞆で絵を描くことが主たる目的の旅だ。イマちゃんが福山の隣の府中の出身ということで、イマちゃんの知人・友人が便宜をはかってくれるのだが、これが有り難いような迷惑のような、という案配で、この本のタイトルを象徴することとなっている。
でも、土地の人たちのあたたかい情が、山口さんの文章から伝わってくる。

これまでに読んだ『行きつけの店』や『新東京百景』と通じるものを感じる上に、ドスト氏といういい道連れが登場することで、ますます楽しい道中記となっている。山口さんの水彩画も、素敵だ。