ほとんど病気

昼間は暖かかったが、夜になって急に冷たい風が吹き始め、寒くなった。
このところ、”地下鉄の友”として持ち歩いていた『世間知らずの高枕』(新潮文庫)を読み終えてしまい、新たな本を持って出るのを忘れてしまった。
地下鉄に乗っている時間は、駅での待ち時間を加えても、せいぜい片道15分くらいのものなのだが、それでも活字を持っていないと、不安になる。
今朝は、ホームに降りたところで地下鉄が入選して来て、車両に乗り込んでから本を持っていないことに気付いたので、キオスクで新聞や雑誌を買うこともできず、中吊り広告を眺めてしのいだ。

帰りは、何か読む物を買おうといつもの本屋に寄ったのだが、もうひとつ「これだ」というものが見つけられなかった。遅くなったので夕食を簡単に済ませるため、24時間営業のスーパーに寄って、そこでも雑誌売り場のスタンドを眺めてみたが、やはり「これ」というものが見つけられず、夕食用のおにぎりを買って、出て来てしまった。
あまりに風が冷たくて、読む本も調達できず、折から通りかかったタクシーの空車に向かって手を挙げていた。

昼間は、仕事に追われていて本を持っていないことなど、まるで気にならなかったのだが、乗り物に乗るとなると、活字がないと不安になる。
たかだか15分くらいと、自分でも思うのだが、どうも落ち着かない。
たまに、一人で昼食を摂りに出かける時も、そういう場合はまず本屋に寄ることがわかっていながら、それでも”地下鉄の友”を持って出かけてしまう。もし、「これ」という買いたい本が見つからなかった時のために、何かしら活字を持っていないと落ち着かないのだ。ひどい時は、お行儀が悪いとは思いながらも、食事をしながら活字を読んでしまう。

これはもう、ほとんど病気なのかもしれない。