明治病”のひきはじめ

今日も、一日曇り空の寒い一日だった。

関川夏央さんと谷口ジローさんの『「坊ちゃん」の時代』『秋の舞姫 「坊ちゃん」の時代第二部』(双葉文庫)読了。
坪内さんの『明治文学遊学案内』で紹介されていたので、以前から読んでみたいと思っていたのだが、本屋で漫画を買うことがほとんどないので、本屋へ行ってもつい探すのを忘れていた。今回、双葉文庫に入ったことで、やっと入手するに至った。

『「坊ちゃん」の時代』の中程に、関川さんの「明治三十八年 『猫』の成立」という論考が掲載されている。ここで、ロンドン留学で漱石が抱え込んでしまった心の病を癒したものが、近代日本の都市家屋にはかならずあった”縁側”の存在であった、と指摘されている。さらに”縁側”の消失が、その後の日本人の心の有り様の変化に重ねておられる。”縁側”というものが日本の家屋の中で占めていた位置と役割が失われてしまったことによる、心の変化は腑に落ちる。

また、『秋の舞姫』では、
<b>白人が東アジア人より美しいと見えたときに、日本あるいはアジアの苦悩は始まった。</b>
と、日本人あるいはアジア人の西洋に対するコンプレックスの根っこを指摘されている。この苦悩は、もちろん現代にまで続いているといえるだろう。テレビCMや新聞・雑誌の広告などには白人モデルがあふれ、ベッカム様フィーバーも衰えを見せない。

この2冊を読んだだけでも、多彩な登場人物と、その意外な人間関係に、全面的に史実に基づいたものではないとはいえ、明治という時代の面白さを、あらためて垣間見せてもらった気がする。どうやら”明治時代病”にかかったようだ。
それにしても、坪内さんには『慶応三年生まれ七人の旋毛曲り』の続編をぜひ書いていただきたいものだ。