遅ればせながら(2)

『ローズガーデン』は、村野ミロシリーズの短編集。ミロシリーズの長編2冊を読んでから時間が経っていたのだが、比較的すんなりとミロの世界に入って行くことができた。桐野さんの『ファイアボール・ブルース』を読んだ時に、女にも荒ぶる魂があるということを感じた。村野ミロにも、見え方は違うのだけれど、”荒ぶる魂”が感じられる。組織に属さない一匹狼の探偵のミロが、周囲から「首を突っ込まない方がいい」と止められた、中国マフィアによると思われる殺しの真相に迫る「独りにしないで」。一度は断った依頼を、依頼人が殺されたことで、自分の限界を試すかのように、危険を顧みず真相に迫ろうとするミロに、わたしは”女の荒ぶる魂”を感じた。かつて、それほど魅力を感じることができなかった『顔に降りかかる雨』『天使に見捨てられた夜』を再読したくなった。

『朗読者』のヒットで、新潮クレストブックのことを知ったようなものだ。わたしが持っている本の奥付を見ると、初刷からわずか4か月で12刷を重ねている。この作品をベストセラーに押し上げるきっかけの一つが、「王様のブランチ」で松田哲夫さんが紹介したことだったように思う。
当時、松田さんのこのコーナーはよくチェックしていたので、「へえ、そんな本が出たんだ」と興味を持ったことは憶えている。すぐに買いに走らなかったのは、海外モノの純文学ということで、ちょっとわたしの腰が引けていたからだろう。そして、あれよあれよという間に、話題のベストセラーになってしまって、逆に興味を失ってしまったかもしれない。それでも、気にはなっていたので、ブックオフで見つけて、買っておいた本だ。

ことほど左様に、わたしはやはり天の邪鬼なのだということを、またもや発見してしまった。