現代の散歩の達人たちが語る、元祖・散歩の達人(一)

朝から雨が降ったり止んだりのぐずついた天気。それでも、暖かいのが救い。

午後、新宿紀伊國屋本店で「文学と時代2 永井荷風」というビデオの刊行記念上映会に出かける。
お目当ては、ビデオもさることながら、なんといっても川本三郎さんと坪内祐三さんによるトークショー
ビデオは、正直、トークショーの最後で坪内さんと川本さんも指摘されていたが、2万5千円じゃあ、個人が購入するには無理があるというのが、感想。
せいぜい、公共図書館などで購入してもらって、それを利用するのが良いのでは?
ところどころ、画質があまり良くない部分があったのが、気になった点。

トークショーは、川本さんが、坪内さんが元東京人の編集者であったことを紹介してスタート。お二人とも、浪人生時代に荷風の『墨(さんずい付き)東綺譚』にハマったという共通点が発覚。坪内さんは「遠藤周作が『永井荷風の作品は、心が弱っている時にハマリやすいので、そういう時には読まないようにしている』と書いていたのを読んで、今、荷風にハマってはいけないと思って、他の作品を読むのはやめました」と会場を笑いの渦に。

また、川本さんが「荷風という人は、単身でいることを選んだ人で、他人との距離の取り方がうまい」と評し、坪内さんも川本さんも、『断腸亭日乗』は文士の日記というに留まらない、いろいろな読み方ができて、面白いということを重ねて発言されていた。
よく「孤高の作家」と言われるが、にんじん1本の値段を通して、社会状況を知っている。一人暮らしだからこそ、お金の価値を知っていて、自己管理がきっちりできている作家だという見方が、これまで言われて来た荷風像と違っていて、興味深かった。また、そういう荷風を紹介するエピソードとして、川本さんが「荷風の絶筆は、新潮社から送って来た原稿料の領収書だったんですよ。荷風らしいでしょ」とも。