南座三月大歌舞伎(2)

23日に昼の部を見物。「扇屋熊谷」は、多分初めて。なんといっても、菊之助さんの敦盛がいい。口跡も紫之上に比べて、落ち着いているし、なんといっても姿が美しい。ただ、女の姿から「実ハ」で正体を現すのが早すぎるように思えるのだが、その辺がどうなのかは、判断できかねる。團十郎さんの熊谷は貫禄十分で、口跡もセリフを張るところ以外は聞きやすくて、認識を新たにした。
「保名」。歌舞伎座芝翫さんの「保名」を拝見したばかりだが、今回の菊五郎さんは、奴が出る派手な演出の方を選んでいらっしゃる。とにかく花道から本舞台へ出ていらっしゃるだけで、すっかり菊五郎さんの世界に引き込まれてしまう。
「松竹梅湯島掛額」も初めての演目。お土砂の場は、とにかく菊五郎さんの茶目っ気がいかんなく発揮されて、楽しい。松助さんも「助六」の通人の時に輪をかけたお遊びを見せる。この辺りは、菊五郎劇団の伝統なのかもしれない。お土砂を降りかけられるとグニャグニャになってしまうという設定を使って、役者さんはもとより、附け打ちの人や幕を引く人まで巻き込んでしまうのには、びっくり。さらに、皆さん芝居がお上手で、お腹を抱えて笑ってしまった。
菊之助さんのお七の娘姿は抜群。ただ、ここでも口跡が気になる。どうも純女形の時は、高い声域を使うようにしておられるようだが、「扇谷熊谷」の小萩の時の声域でもまったく違和感はないだけに、どうなのかな?と疑問に思う。新之助さんも、セリフがちょっと気にはなったが、とにかく美しい若衆姿には惚れ惚れとしてしまう。

昼の部と夜の部を比べると、個人的には昼の部の方が圧倒的に楽しめた。