”祇園書房”は、頼りになる隣りの奥さん(2)

雑誌の棚へと移ると、「小説新潮」の最新号が平積みになっていて、表紙には”山口瞳””坪内祐三”の文字が踊っている。思わず取り上げて、目次をチェック。読む本がなければ迷わず購入するところなのだが、三月書房ですでに何冊か入手してしまったし、東京から持って来た本もまだ読み終えていないので、これは”いつもの本屋”さんで購入することにする。そうこうするうちに、友人が奥から出てくる。ちょっと立ち話をした後、仕事の邪魔になってはいけないので、とりあえず棚の続きを見せてもらう。
料理本の棚、文庫の棚と順番に見て行く。文庫本の棚は、ある意味、いつもの本屋さんより充実している。そんなに好みの本が似ているとは思ったことはなかったのだが、こうして彼女が丹精している棚を見ると、わたしのツボにバッチリはまっている。彼女が好きな絵本のコーナーもしっかり出来ている。そちら方面はまったくの門外漢なので、よくわからないが、エドワード・ゴーリーが揃っていたりするあたりは、さすが。
結局、小1時間ウロウロとして、購入したのは『祇園・舞ごよみ』(京都書院アーツコレクション)のみというのは、申し訳ない限りなのだが、欲しい本がありすぎて、歯止めが効かなくなりそうだったので、泣く泣く我慢した。

場所柄、舞子さんが雑誌や文庫本を物色していたり、時には南座出演中の役者さんが訪れることもあるという。友人曰く「最近、歌舞伎関係の本がよく売れるのは、やっぱり南座のお客さんが行き帰りに寄ってくれるからかな?」。

祇園書房は、友人が店長だから内輪褒めするわけではなく、いい”街の本屋さん”だった。”三月書房”が、誰もが一目置く頑固な職人気質の親爺だとすれば、”祇園書房”は、気軽に立ち話ができて、イザという時には頼りになる隣りの奥さんといった感じだろうか。