團菊祭大歌舞伎

朝から快晴、歌舞伎にはもってこい(雨の日は、なんとなく気分が沈みがちなので)。
歌舞伎の友・Kさんと五月團菊祭大歌舞伎・昼の部見物に。

昼の部の演し物は、
一、「鞘當」
二、「実盛物語」
三、「口上」
四、「幡随長兵衛」

昼の部は、なんといっても「実盛物語」。途中、地震発生というアクシデントもなんのその、堪能することができた。
切り落とされた母の腕を、そうとは知らずに幼い息子・太郎吉が拾い上げる。その腕が握っていたのが源氏の白旗。無事に太郎吉の祖父がかくまっている源氏の御台所の手に白旗がわたったところへ、腕を切り落とした当の実盛が現れ、その腕は小万のものと知れる。さらに、発見された小万の遺骸が運び込まれ、腕を継ぐと死んだはずの彼女が一瞬生き返り、遺言を述べる。そうこうするうち、御台所は産気づき、見事に跡継ぎの男の子が誕生したところへ、子供の詮議という命を帯びた瀬尾がやってきて、太郎吉に討たれるが、実は瀬尾は太郎吉の祖父で、孫に手柄を立てさせるために自らの命を孫の刃にかけて落としたのだった、という、荒唐無稽なお話が、「実盛物語」だ。

配役は、菊五郎さんの実盛、新・市蔵さんの瀬尾、左團次さんの九郎助、右之助さんの小よし、萬次郎さんの葵御前、亀蔵さんの仁惣太、清水大希くんの太郎吉。
菊五郎さんの実盛は、生締め鬘が映えて、登場するだけで田舎の百姓家が、パッと明るく華やかになる。小万の腕を切り落とした時の様子を、義太夫の語りに乗せて身ぶりで表現する”物語”の部分は、この役の見せ場だそうだが、踊りもいい菊五郎さんだけに、きっちりと見せている。
市蔵さんの瀬尾。てっきり敵役だと思っていたら、最後の最後に「実ハ」となり、孫の太郎吉に手柄を立てさせるという、難かしい役。筋書きをあらかじめ読んでいなかったわたしは、太郎吉にわざと討たれて「実は、小万はわたしの娘」という告白を聞くまで気付かなかった。市蔵さんの演技に、見事にやられた。萬次郎さんの葵御前も、このところ拝見したお役の中では、あの独特の声とセリフがむしろ、こ役に合っているのではと感じた。

「鞘當」は、菊之助さんの華やかな美しい若衆ぶりが目に付いた。
「口上」「幡随長兵衛」については、5月5日の感想で。