安鶴さんの苦言(1)
実家の本棚から発掘した、日本ペンクラブ編・山川静夫さん選<b>『歌舞伎読本』</b>(福武文庫)。途中まで読んでそのままになっていたのを、思い立って読み始め、読了。
収録されているのは、
戸板 康二「花道」
安藤 鶴夫「古い伝統の芸について」
高橋 睦郎「死までの傾き」
村松 友視「現代の定九郎」
瀬戸内晴美「揚げ幕係り」
杉本 苑子「初芝居/人買い舟は沖を漕ぐ」
円地 文子「咲きさかるわが玉三郎」
山川 静夫「三階席の幸せ」
橋本 治「歌舞伎の小道具」
山口 廣一「名にし負う初代中村鴈治郎」
武智 鉄二「間」
岸田 劉生「旧劇美の味」
折口 信夫「役者の一生」
という13編。
安藤鶴夫さんの「古い伝統の芸について」では、ハっとした。
冒頭の
<b><歌舞伎>など、伝統の芸について―
どうかいじらないでもらいたい。技術も落ちるし、戦後、たいへん甘やかされて、いまの大きさになった役者さんの、一通り、いう目の出るいまの状態、いまの精神状態というか、そういう考え方や、芸で、<歌舞伎>を、いまのままではどうも、などと、ヘタに気をまわして考えだしたことも、いまのような、つまらない、魅力の無い<歌舞伎>にしてしまったことの、ひとつの理由にはならないか。</b>
という文章を読んで「ウワー、噂に違わず辛口だなあ」と思った。
先日、初めてうかがった立川談春さんの独演会で、談春さんが談志師匠と安鶴さんのことを「蜘蛛駕篭」という噺にからめて紹介された。そのエピソードも、辛口で知られた安鶴さんらしいものであったことが、ふと思い起こされた。