歌舞伎座昼の部

序幕が「陣門・組討」。幸四郎さんと染五郎さんの親子共演。そういえば、夜の部も「鈴が森」が親子共演だった。
続いて、「棒しばり」。友右衛門さん、勘太郎さん、染五郎さんのコンビネーションがいい。特に、勘太郎さんと染五郎さんの太郎冠者・次郎冠者の遊び心溢れる舞台は、若手の勢いが感じられ、笑いころげてしまった。
そして、雀右衛門さんの「葛の葉」。葵太夫さんの熱演もあり、院本ものを堪能。80歳を超えてなお、早替わりを難なくこなし、子役の手を引き、みごとな字を書き、と、そのバイタリティーはすごい。
そしてお待ちかね、玉三郎さんの「藤娘」。玉三郎さんの踊りを拝見するのは、何年ぶりだろう? 舞台は藤の花の絵柄の銀屏風を立てまわした、シックな装置の中に、玉三郎さんが登場するだけで、もう照明が倍になったのでは?と感じられるほど、華やかな雰囲気に包まれる。以前は、玉三郎さんの踊りというとおすまししているように感じられたのだが、今回の「藤娘」では、途中で上手から下手までくまなく挨拶をする時に「あ、こんなに愛嬌がある人だったんだ」と認識を新たにした。
踊りの丁寧さは相変わらず。衣裳を変えるために引っ込んでふたたび登場する時の、なんともいえないはんなりとした雰囲気は、玉三郎さん以外では、ちょっと考えられない。
「あー、このままずーっとこの踊りが続いてくれたらいいのに」と思ってしまった。
ところで。本日、3階のお客さんの中に、とんでもないおばさん(おばさま、とはお世辞にも呼べない)の10人前後の団体さんがいて、3階中のひんしゅくを買っていた。舞台が相手もずーっとおしゃべりを続けている。それも、3階中に響いてしまうようなしゃべり方なのだ。わたしの周りにいた人たちも、みんなずーっとそのおばさんたちのことが気になったようで、時々、うるさいと、そっちの方をにらんだりしているのだが、まったく気付かないらしく、お構いなしのおしゃべりは続いた。
「藤娘」の時は、おばさんたちよりずーっと前の方に座っていたお客さんも、振り返って見ていたようだ。
わたしはもう、すっかり玉三郎さんの世界に浸ってしまったので、そんなおばさんたちの方を見ることさえ惜しくて、無視し通したが。
ちなみに、隣の席の女性二人連れも、舞台が開いてもしばしおしゃべりをしていたけど、あのおばさん軍団にくらべたら、まったく問題外。
いやはや、切符が取れなくて、幕見に朝から並んでいた人たちもいるのに、人の観劇の邪魔してもまったく気にしない、おばさんパワーは強しというところ。