仁玉コンビ+左團次さんで堪能した「御所五郎蔵」(1)

歌舞伎座の夜の部を、歌舞伎の友・Kさんと見物。
なんといっても、お目当ては「御所五郎蔵」の通し。仁左衛門さんの五郎蔵と百合の方、玉三郎さんの時鳥と皐月、というそれぞれ役柄が違う二役が楽しみだし、左團次さんの星影土右衛門とくれば、期待するなという方が無理。

玉三郎さんの時鳥vs仁左衛門さんの百合の方は、見応えがあった。
序幕「浅間家殺しの場」(通称「時鳥殺し」)では、筋書きのインタビューのところで「百合の方が楽しみ」とおっしゃっていた仁左衛門さんだが「もう、こんな悪い婆さんはいない!」というくらい、憎々しい百合の方を演じていらっしゃる。昔、拝見した延若さんの八汐を思い出した。
お付きの奥女中がこれまた、見るからに憎らしい二人で、その上、腰元二人が可愛い顔で、百合の方や奥女中の嬲り殺しをなんなく手伝うところが、この場の陰惨さを増幅させている。
自分の娘が、時鳥がやってきたことで、巴之丞から遠ざけられた恨みを晴らすため、毒薬を飲ませて、顔を醜くしてしまうという、恐ろしい企てをした張本人が、百合の方。それだけでは飽き足らず、時鳥を殺害しにやって来る。
百合の方が時鳥をなぶり殺す途中に、絵のような美しい形に決まるところがあって、玉三郎さんのはかない美しさが引き立っていた。
南北の退廃美とはまたひと味違った、陰惨さが黙阿弥の味だろうか。

二幕目「五條坂仲之町」の場。うってかわった、美しい男伊達となって仮花道から登場する、仁左右衛門さんの五郎蔵とその子分vs左團次さんの星影土右衛門が本花道を登場。率いているのはダサい門弟軍団(左團次さんはステキだった。念のため)黙阿弥に欠かせない、七五調の快いツラネから、仲之町甲屋の前でのくだり。土右衛門の門弟のダサい感じが、余計目立つのは、狙いどおり。
両者の間の空気が一触即発となったところで、「待ってました!」秀太郎さんの粋な留め女。以前はわからなかったのだが、秀太郎さんのこういう粋な姐さん系が、最近すごく好きになってきた。魁春さんもそうなのだが、年を重ねてみないとわからない味わいというのがあるんだということを、このところ痛感している。