梅雨空も遠慮する?(1)

下の巻は、海に落とされてひどい有様になった金ちゃんが、夜中に泣きながら親分の家へ訪ねていくところから(だと思う)。親分の家では、手慰みの真っ最中で、表の戸をドンドンと叩く音を聞いて、子分たちが慌てふためくところの描写が、いちいち面白い。そして、金ちゃんの話を聞いて「そんなバカな話があるもんか。敵をとってやるから、俺の言うとおりにしろ」と言い放った親分が、金ちゃんと時間差で化け物白木に乗り込む。
事は、親分が思ったとおりに運び、無事、仕返しも成功して、めでたしめでたし、という噺。

「品川心中」が終わったところで、談春さんが客席に向かって「今、何時?」と確認すると、なんと8時45分。1時間40分あまりもぶっ通しで、談春さんの噺をうかがっていたわけだが、まったく長いという気がしない。
そういえば口開けのところで、最近、若い頃のようにさらっと噺をやることができるようになってきて、それがまたいいなと思っているので、「今日もさらっとやります」と最初に言っていたのだった。
わたしは、他の噺家さんの独演会に行ったことがないので、よくわからないのだが、談春さんの独演会は、とにかくマクラが長くて楽しい。
聞いているときには、まったく今日の噺とは無関係な、世間話だと思っていたことが、実は、噺の複線として効いているというのに、あとでびっくりさせられる。
今回の、幽霊の話、2チャンネルの話も、ちゃんと「品川心中」の中に出てきたのだった。
「昨日、国立劇場演芸場に来た人?」と聞いて、案外、少なかったようで「じゃあ、『小猿七之助』をやります。10分休憩をいただいて、55分再開ということで」となった。

中入の時に、のどがかわいたので、自動販売機でお茶でも買ってと思って、ロビーに出たら、次回の独演会の切符やら、立川流の団扇やら、志ら乃さんの二つ目昇進記念の会の切符やらの売り声がしきりに聞こえる。
お茶は大きな缶しかなかったので、小さい缶のジュースを買って飲んでいると「この団扇はこの会と○○でしか買えません」と前座さんが声を張り上げている。立川流の紋が真ん中にあしらわれたデザインがなかなかかっこいいな、と思っていたら「今日、持ってきた分を完売しないと、家元に怒られます」という声が・・・。この一言につられて、つい買ってしまった。