ずっとこのまま・・・(2)

そして、衣裳を替えるために、屏風の陰に引っ込んで再び登場する時、かがんだ形で顔を、下手の屏風から覗かせるのだが、この時の玉三郎さんの可愛らしさといったら、もう言葉には表せない。
舞台を下手から上手、そして中央へと移動しながら客席に向かって挨拶をするのだが、かつての玉三郎さんだったら、お澄ましした感じになったのだろうが、今回は、このご挨拶になんともいえない愛嬌がにじみ出ているのだ。

今回、玉三郎さんの「藤娘」を楽しみにしていたのは、とにかく「綺麗な踊り」を見たいという気分だったし、それだけで十分だと思っていたのだが、いやはや、玉三郎さんのこの愛嬌あふれる踊りぶりに、すっかりやられてしまった。
衣裳を替えて登場するたびに、踊りの性根が変化していくのがよく現れていて、お酒に酔ったところなども、そんなはずはないのだが、ちょっとお顔が上気しているように見えてくる。
このまま、ずーっと玉三郎さんの「藤娘」を拝見していられたらいいのに・・・。そんな気分で歌舞伎座をあとにした。

「棒しばり」も染五郎勘太郎・友右衛門さんの、息の合った熱演で、笑い転げたのだが、「藤娘」の前にすっかりその印象が薄れてしまった。