聞いてみたくなる志の輔さんの「旅まくら」(1)

今まで、なんとなくのイメージで敬遠していたのが、立川志の輔さん。
落語の高座はおろか、志の輔さんが司会をしているテレビ番組さえも、ちゃんと見たことはほとんどない。
何がダメかというと、まず、あのピカピカのヘアースタイル。髪の毛が硬くて多そうにお見受けするので、スタイリング剤でまとめていらっしゃるのだろうが、どうもあのピカピカは、いただけない。
そして、あの押しの強そうなシャベリ。なんだか、パっと見た感じで、わたしの苦手なおじさまの条件をばっちり満たしていらっしゃるのだ。

ところが、談志師匠にとっては、落語協会脱退後、はじめてのお弟子さんだということもあるようで、かなり評価が高いらしい。さらに、『高座の七人』(講談社文庫)では、吉川潮さんも、その実力を認めていらっしゃる。
そうなると、だんだん勝手な先入観で、高座もテレビもきちんと聞いたことがない人を決めつけてしまうのは失礼だな、という気がしてきた。
とはいえ、寄席には出ない立川流。いきなり独演会に行くというのも、第一印象通りだったとしたら、ヤだな、という気がする。そこで読んでみたのが、お手軽な文庫で読める志の輔さんの本『志の輔 旅まくら』(新潮文庫)だ。

志の輔さんは、サラリーマンやOLに人気があると、吉川さんは『高座の七人』の中で書いていらした。この『志の輔 旅まくら』を読んでみると、その理由がわかる気がする。
古典も新作も得意とするという志の輔さんの、独演会でのマクラを集めたこの本からは、社会の中で働く人のセンスにフィットする、単なるバカ話に終らせない、知的なものを感じる。