染丸・権太楼二人会@鈴本

仕事を早めに切り上げて、上野に向かう。二人会といいながら、なんだ、権太楼さまは一席かーと、先日もらったチラシを見て、ちょっと落胆したのだけれど、いやいや、権太楼節全開の「大工調べ」を堪能しました。マクラで「もう、10日ここで主任をとっていたので、自分の家のようです。今日は気楽にいきましょう」とにこやかに。前にも、大工さんだったお父様のことはマクラで聞いたことがあったけれど、今回はお母様のことも含めて、思いで話が聞けた。お母様は「さすが、権太楼さまのお母様!」というエピソードの持ち主で、もうマクラからずーっと笑いっぱなし。与太郎の時に、いつもの”権ちゃんスマイル”がたっぷり見られて、本当に嬉しくなってしまった。
大工の棟梁が、大家さんに向かって腹を立てたあげくにポンポンと言う啖呵は、江戸っ子の気の短さと言葉のキレが冴えていて、気持ちよく聞くことができた。
三三さんの「釜どろ」。上手いなーと思いながら聞いていた。豆腐屋の老夫婦のやり取りが目に見えてくるよう。帰宅して、矢野誠一さんの『落語読本』の「釜どろ」の項を読んでいたら、戸板康二先生の『いろはがるた随筆』で「月夜に釜を抜く」という犬棒かるたの”つ”は、この噺のことだと思ったと書かれていることを知った。あー、この本も読まなくちゃなぁ・・・。
染丸さんは初めて聞いた。ネタは「愛宕山」。先日「昇太ムードでラックス」で聞いたのだけれど、前半の雰囲気が結構違うなぁと思った。ま、昇太さんの場合は古典でも”昇太流”だから、当然か。上方の噺家さんらしく、お囃子入りで、華やかに演じる。
ネタに入る前に「五段返し」という音曲についての話をされて、先日、年増の芸者さんから教わったという「赤ゲット五段返し」というのを、お囃子入りで披露された。歌が上手いというのとはちょっと違うのだけれど、味があって、花があるなぁと思った。歌そのものも結構面白くて、メロディーは長唄の「越後獅子」の一部が使われている。「五段返し」というもの自体が全部「越後獅子」のメロディーを流用しているのかどうか、わからないけれど、他の「五段返し」も聞いてみたいな、と思った。
ヒザの仙三郎社中は、ベースはいつものネタなのだけれど、それぞれが時間をかけてたっぷりと披露。そして、普段の寄席では鞠を見せる仙三郎さんが、今日は土瓶の芸を披露。「なんであんなことができるんだ?」と、目が点になった。ちなみに「わたしが上野の吉右衛門です」という決まり文句の時に、今日は鉦が入らなかったので、ちょっとやりにくそうだった。