「笑芸人」超特選落語会〜九代林家正蔵襲名披露

笑芸人」超特選落語会は、もちろん談春さんがお目当て。
きくお「鯛」
勢朝「新撰組」?
歌武蔵「黄金の大黒」
きくおの部屋 勢朝・高田文夫・きくお・王楽(飛び入り)
正蔵インタビュー
仲入り
桃太郎「柳昇物語」
談春「庖丁」

談春さんは、終演時間を気にしてか(「SWAの開場時間までには終わらせますから」と言っていた)、マクラもそこそこに、ネタに入る。すぐに「ア!庖丁だ!!」とわかりましたよ。途中、きくおの部屋ネタが飛び出したりしたのは、サービスでしょうか? 延清のところにやってきて、いよいよ酔ったふりで言い寄るところの唄が、普通は「八重一重」なのだけれど、談春さんのは違う唄。
だと思ったのだけれど、「八重一重」だったかもしれないと、速記本を確認して思っているところ。唄いだしが「八重一重」じゃなかったので、自信なしでございます。筑摩書房の『古典落語』第二期第三巻の解題で紹介されている円生師匠の芸談には「橘園さんは『梅にも春』を唄って口説くんです。」とあるので「梅にも春」の文句を確認ですね・・・。
ここで妙にきれいに唄っちゃうと、その後、延清
これも、同じ円生師匠の速記本だと“清元延安喜”という名前になっています。前に聞いた時に、談春さんも“おあき”とこの師匠の名前を呼んでいたので、こちらの名前でしょうか・・・
が悪態をつく時にうまくないので、わざと酔っぱらいががなっている風に。延清(延安喜)が寅に抵抗して、手を出すところとか、いかにもで、いつ聞いてもいいですねぇ。そして、寅が「お前の亭主に頼まれたからこんなことをしているんだ」と白状した上、二人がすっかり意気投合したとは知らずに乗り込んで来る常の間抜けぶりが際立つ。このネタの、な〜んだ!という落げとの落差がいいのだ。
やっぱり、談春さん、いいです。これからも、できる限り、ついていきます!
ただね。談春さんの上がりに至るまでに、あまりに場がグチャグチャになっていたため、談春さんを以てしても、お客をつかみきれなかったのかなぁ?という感じもあった。ちょっと勿体ない。今、面白い!と高田さんが思っている人をズラッと揃えて見せようとしたのでしょうが、ちょっと欲張りすぎたかな?という気がしなくもない。
終演後、今日まで開催の「笑芸人ギャラリー」を見物して、橘蓮二さんが撮った談春さんの写真を、じっくり拝見。即売コーナーで、昇太さんの『はじめての落語』(CDつき)を購入(ちなみに、その時、着替え終わった談春さんが、ギャラリーの入り口の向うに!)。
すっかり、元気をいただいたので、立ち見必至の末広亭に、正蔵襲名披露を見に行くことにする。
ちょっと用足しをして、お茶を飲んでから行ったので、場内に入ったら、いっ平さんの途中だった。
勝丸 太神楽
圓蔵「道具屋」
馬風 漫談
仲入り
口上 (下手から)小朝、鶴瓶木久蔵正蔵、圓蔵、馬風
小朝「居酒屋」
木久蔵 先代正蔵の想い出(これが「正蔵伝」なのでしょうか?)
鶴瓶「青木先生」
二楽 紙切り
正蔵「子は鎹」
とにかく、二階も一杯で、一階後方も立ち見で一杯、上手・下手の桟敷の後ろでの立ち見なんて、初めてのこと。途中、後ろ幕が何度も取り替えられて、舞台の上下には贈り物が飾られ、客席のところには新・勘三郎さんとたけしさんから贈られた花が飾られている。後ろ幕の中では、季節にぴったりの高橋英樹の桜模様のものと、所ジョージ七福神正蔵のものがいいかな?と思った。実は、4枚くらいしか見ていないのだけれど、知人から聞いた話では、合計7枚!の後ろ幕があるとのことで、それを見るためにも、この後の浅草、池袋にも行ってみようかな?と思ったりしている。
新宿の顔付けは、いかにも”小朝プロデュース”という感じで、日替わりの上方ゲストが、今日までが鶴瓶さん、明日から春團治さん・三枝さんという豪華な顔ぶれ。
鶴瓶さんの「青木先生」は、あちこちで噂には聞いていたのだけれど、なるほど、こういうネタだったんですね。青木先生が興奮すると「ピー!」という音を出すのをおもしろがって、毎日手を替え品を替えする生徒と、期待通りに「ピー!」とやってしまう青木先生。でも最後に先生の本心が明かされて、”ちょっといい話”になっていて、後味がさわやか。
正蔵さんの今日のネタは「子は鎹」。生で聞くのは、多分、はじめて。先日、どちらかのサイトで「声が荒れていて、子供のセリフを聞くのがしんどい」といった意味のレビューを読んだので、ちょっと心配だったのだけれど、今日は、調子は悪いという感じでもなかったと思う。亀ちゃんの健気さ、ちょっと生意気なところ、やっぱり子供が活躍するネタは、この人に合ってるなぁと思った。
笑芸人」超特選落語会で「やっと疲れが出て来ました」と言っていたけれど、多分、最初の10日間は、疲れが出る余裕もないくらい、緊張していたのだろうなぁ。で、やっと少し疲れを感じる余裕が出て来たといったところだろうか? でも、あんな超満員の、熱気ムンムンの末広亭の高座に上がったら、疲れも忘れて頑張れることでしょう。「週刊文春」で”時期尚早”と書かれたりしているけれど、こんなに披露目が盛り上がっているのも、正蔵さんの世間一般での認知度と人柄故なのだから、これと「タイガー&ドラゴン」ブームをうまく利用して、落語界全体が活気づくように、他の芸人さんにも頑張っていただきたいものです。せっかく興味を持って、落語を聞いてみようと思った人がこんなにたくさんいるのですから。

笑芸人 (Vol.16(2005春号))

笑芸人 (Vol.16(2005春号))