『狂乱廿四孝』

北森鴻さんの作品を読んだのは、初めて。舞台は、明治維新直後の守田座、そして脱そのため、両足を切り落とした澤村田之助をめぐる人々が巻き込まれる殺人事件の謎を追う、というもの。河竹新七(後の、黙阿弥)と、彼に弟子入りしたお峯という17歳の娘、河鍋狂斎(のちの暁斎)、仮名垣魯文、五世菊五郎河原崎権之助(後の、七世團十郎)、長谷川勘兵衛といった人々が主要な登場人物。なかなか面白い趣向だし、ストーリー展開も、最後の大どんでん返しまで引っ張る。ただし、歌舞伎好きとしては、いくつか???という描写や言葉遣いが、細かいところながらあった。それと、わかりやすくする為なのだろうけれど、芝居者同士の会話で、相手の呼び名にいちいち注釈がついているのが、かえって読みにくい気がした。この本には、おそらく「狂乱廿四孝」の元になったであろう短篇が収められていて、そちらを今まだ読んでいるところ。確かに、「狂乱廿四孝」の方が、ストーリーとしてよくなっている気がする。

狂乱廿四孝 (角川文庫)

狂乱廿四孝 (角川文庫)