師走の独り看板 立川談春@東商ホール

へんだよ、この人・・・。だってさぁ、「紺屋高尾」と「芝浜」だよ。普通やらないでしょ、こんな番組。そんでもってどっちも結構、なんてないでしょ、普通。それをやっちゃうんだもの。
今日のお題は「俺は知らねぇぞ。お前ぇがいったんだからな」。もしかして、それが言いたかったから、この番組ですか?ってのは、うがち過ぎか・・・。そして、女は強い。少なくとも談春師の演じる女は、強い。それは、表面のことじゃなくて、芯が強い、ということ。どんなところへだって嫁にも行けた三浦屋の高尾は、富も名声も何するものぞと、紺屋の久さんの嫁になる。魚勝のおかみさんは、どうしようもなく飲んだくれになっちまった亭主の性根を、一世一代の大嘘で叩き直した上に「ぶたれたっていい、蹴られたっていい、どんなことでも我慢をするから、あたしと一緒にいておくれ」と勝五郎に訴える。どちらも、なんと強い女であることか・・・。
帰りのエレベータで聞こえて来た会話。「落語特選会で放送した、志ん朝師匠のがすばらしかったですね」とちょっと若い目の男性が、連れと思われる年配の男性に言うと「ああ、私はあれを生で聞いてますよ。あれは大変結構でした。いや、今日の談春師匠のも結構だったんですよ。ただ、志らくがどうの、師匠がどうの、って途中でチャチャを入れるから、そこでふっと正気に帰っちゃうんですよねぇ」。
そう、それが、少なくとも今の談春師の落語だ、と私は思っているのだけれど・・・。10年後、20年後、やっぱり変わらないんじゃないかなぁ?という気もするけれど。
仲入りが終わって、高座に上がって、ふっと一息ついて「わかったよ、年に一度、恥をかけばいいんでしょ」と言ってそのまま「起きとくれよ、お前さん!」と亭主を揺り起こした瞬間「エ、ここで『芝浜』?!」と、かなりびっくりしたけれど、braryさんのレビューを読ませて頂いて「そうか、あれは夏のブディストのリベンジだったんだ・・・」と今頃思い出した。ダメな追っかけであります。たとえ。グーが天から降って来ようとも、やっぱり勝手についていくぞ!(笑)
さて、来週のにぎわい座は、何を聞かせてくださるのか? 「文七元結」・・・いやぁ、それもいいけど「二番煎じ」なんかいかがでしょう?