『志ん朝落語』

榎本滋民さんといえば、劇作家であり、落語特選会の解説者。榎本さんのお芝居は、一度だけ三越劇場で見たことがあった。当時好きだった某役者さんが出ていたので、見に行ったのだったと思う。落語特選会は、落語のことなんて全然知らなかった学生時代、風呂上がりになんとなく見るのが習慣になっていた番組。それは、榎本さんが、江戸時代のあれこれを、わかりやすく解説してくれるというのに興味を持ったからだった。毎回必ずチェックして見るというほど熱心な視聴者ではなかった。月に一度の放送だったということは、落語が好きになった近年になって、知った。それまでは、毎週やっていた番組だと、なんとなく思っていたのだった。
特選会をちゃんと見ていれば、志ん朝師匠や圓生師匠、小さん師匠の落語をたくさん聞くことができたのになぁ、とは今になって思うこと。残念ながら、当時はご縁がなかったということなのだろう。
あとがきで文さんこと山本文郎さんが「わたしも、榎本先生も、志ん朝師匠のことが大好きだった」と書いておられるが、榎本さんの”志ん朝落語”の解説には、志ん朝師匠の落語への賞賛と敬愛の気持があふれていて、志ん朝師匠に間に合わなかった落語好きとしては、歯がみをして悔しがるしかない。そして、志ん朝師匠の落語がいかに、今の多くの噺家さんたちに影響を与えているのかを知ることができる。やっぱり間に合わなかったことを悔しがるしかないのだけれど・・・。

榎本版 志ん朝落語

榎本版 志ん朝落語