『侠風むすめ』

作者の河治和香さんは、前にも作品を読んだ事があったことに、篠田正浩さんの解説を読んでいて気付きました。

笹色の紅―幕末おんな鍼師恋がたり

笹色の紅―幕末おんな鍼師恋がたり

これ、結構面白かったです、そういえば。
この『侠風むすめ』は、国芳の娘・登鯉の成長物語というのが縦線で、横線は、当時の世相や国芳をはじめとする、周囲の人たちの身にふりかかるあれこれ。ちょうど、奢侈禁止令が毎日毎日、触れ出される江戸の町が舞台。柳亭種彦や歌川国貞といった有名どころの名前もチラホラ見える。窮屈になっていく世の中に、ユーモアのセンスと知恵で一矢報いる国芳の絵は、ともすれば暗くなる江戸の町の人々の心を楽しくさせていたんだなぁ・・・。
贅沢は敵だ!」というスローガンの下、庶民に我慢を敷いた第二次大戦中の日本と、なんだか共通したものを感じる。暗い世の中っていうのは、いつでも、ささやかな庶民の楽しみさえ奪おうとする、上からの理不尽な弾圧がまかり通るから生じるんだなぁ。
国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)

国芳一門浮世絵草紙 侠風むすめ (小学館文庫)