『露の身ながら』

多田富雄さんの著作は、お能に関係したものをいくつか読んだことがあるが、柳澤桂子さんについては、お名前だけは存じ上げていたものの、お書きになったものを読むのは、初めて。原因不明の難病と何年も"共棲"されているそうで、その忍耐強さには頭が下がる。自分が同じような状況におかれたら、いったいどうなってしまうだろう??? 多田さんも、話すことができず、左手の指1本でパソコンを使った執筆活動を余儀なくされているそうだが、精力的に原稿を書き、新作能の台本を仕上げていらっしゃる。やはり、何か「これだけは!」と思えるものを持っていて、強い意志を持っている方は、身体の不具合を乗り越えて活躍なさるんだなぁ。
ちなみに、この往復書簡集のタイトルとなった「露の身ながら」は、多田さんがお好きな一茶の句「露の世は露の世ながらさりながら」という辞世の句からとったものらしい。多田さんが手紙の中で、この言葉を何度かひいていらっしゃる。

露の身ながら 往復書簡 いのちへの対話 (集英社文庫)

露の身ながら 往復書簡 いのちへの対話 (集英社文庫)