『東海道四谷怪談』と『鶴屋南北』

今月の納涼歌舞伎は、なんといっても勘太郎くんのお岩さまに注目している。ということで、歌舞伎オン・ステージシリーズの『東海道四谷怪談』を、まずは予習のために読んだ。
この芝居、何度も見ているのだけれど、台本を読み直してみると、気づいていなかったこと、意識していなかったことが、いろいろとあることに気付かされる。やっぱり、台本を読むっていうのも、大事だよね。
そして、副読本ということでもないのだけれど、だいぶ前に買ったままになっていた『鶴屋南北〜かぶきが生んだ無教養の表現主義』も持ち歩き本として読んでみる。
郡司さんによれば、南北最大の傑作は「盟三五大切」、ということになるのだけれど、どちらも「忠臣蔵」が裏テーマになっていて、「忠臣蔵」がいかに大ヒット作だったか、ということを改めて。
また、南北が紺屋の息子で、紺屋というのは賎民あるいはそれに深く関係する仕事だった、ということを知り、意外に思う。「紺屋高尾」の高尾太夫はそういうところへお嫁に行ったのか…。まぁ、吉原の遊女というのも、社会システムとしてみれば、決して高い身分ではないのだろうけれど。でも”大名道具”なんて言われていた全盛の花魁が、単なる職人というのとはさらに違う職業の人のところにお嫁に行く、というのも、なんかそこに裏テーマ的なものがあるのかしら?などと、うがった見方をしてしまったりする。
そして、南北は自分でも「無教養だ」と標榜していたらしいが、字を知らない人だった、というのも意外といえば意外。歌舞伎の作者なんて、身分は低くても教養はあるんだろう、と思い込んでしまっていたけれど。
そして、「東海道四谷怪談」が初演された頃は、寄席が大ブームで、歌舞伎人気に翳りをさすほどだった、というのもびっくり。でも、そんな中で「東海道四谷怪談」は大ヒットロングランを記録したのだから、それだけ当時の人にとっても、刺激的で面白い芝居だったんだろうな。

東海道四谷怪談 (歌舞伎オン・ステージ)

東海道四谷怪談 (歌舞伎オン・ステージ)