馬琴の原作が読みたくなった10月国立歌舞伎

7時半過ぎに起床。いよいよもって、寝坊がデフォになってきた…。お弁当は断念。いかんいかん。
夜は、国立劇場の10月歌舞伎公演。平日16時半開演というのに、客席はけっこう埋まっている。今回はダブルの宙乗りということで、3階の客席上手下手が結構つぶれている。
発端と二幕目は、琵琶?を使った音楽と、大小のセリをメインにした抽象的な装置。それ以外は、歌舞伎の定式といってもいいような道具で、多分対比をねらったんだとおもうのだけれど、抽象的な装置のところと定式の大道具のところがうまくつながらず、別々の芝居、という印象。あと、先月の演舞場で金閣寺の道具が、いかにも”金閣寺”というものだっただけに、国立の金閣寺がちょっとみすぼらしく感じられてしまった。ああいう場面は、無駄に豪華にした方がいいんじゃないかな?
ダブルの宙乗りは、工夫は面白かった。九六姫が乗っているオオカミ?犬?がクルクル向きを変えるのがスリリングだし、宙乗りしながら二人が割ゼリフを言うという趣向も新しいのでは?
国立なので、座組がそれほど大きくないことで、みなさん二役、三役を演じる。菊五郎さんのレディガガ的仙女が綺麗だったなぁ。二役目の荷二郎はお手の物、最後に管領斯波義将も若々しくて綺麗。ちょっと軽い気もしなくもないが…。菊ちゃんは、今回は立役の小夜二郎がよかった。姑摩姫は衣裳がイマイチ好きじゃないなぁ。宙乗りで垂直方向にクルクル回るのは、菊五郎さんが水平方向に回るのとの対比? 亀兄と松也くんのチンピラコンビが、息もぴったりで、こういう役がちゃんとしてないと、菊五郎さんの泥棒の親分が映えないのよねぇ。橘太郎さんの下女・お玉もピリっと効いております。梅枝くんの復市も綺麗な前髪立の若衆で、立廻りがんばってます。嵐くん、まだ若干セリフ廻しが気になる時もあるけれど、先月に続いていい感じになってきた。そして、時蔵さん。荷二郎に乗り換えるところがあまりに唐突な気もするのだけれど(小夜二郎が荷二郎にヤラれる前後で、もうちょっとそれっぽいそぶりを見せておいた方がいいような…)、荷二郎の女房になってからのカラっとした、あっけらかんと悪い女になっちゃったところは、時蔵さんならでは、かな。
幕切れの姑摩姫の「あなたは九六姫?」は洒落なんだよね?
今回、新たに構成し直した新作「馬琴歌舞伎」ということだったが、なんか台本と演出がもっと上手くできていたら、面白くなりそうなのになぁ、という残念感が残った。原作を読んでみたいが、翻刻されてるのかしら???と思ったら

開巻驚奇侠客伝 (新日本古典文学大系)

開巻驚奇侠客伝 (新日本古典文学大系)

ありました。
1階下手側ロビーの一角で、これまでの歌舞伎の上演ポスターの展示が行われているのだが、これって図録になって出版されたら、欲しいな。
筋書と上演資料集と台本で2600円、さらに正本写合巻集「青砥稿花紅彩画」2000円也で、お勉強に投資した(ということにしておこう)。

<追記>
保さんの劇評を読んで、疑問だったり物足りなかったりしたところが「あ、そういうことか!」と腑に落ちた。保さんがおっしゃる通り、もう一度洗い直したら、新しい歌舞伎のレパートリーが誕生、ということになりそう。このままじゃなく、もう一度見直して、ぜひ再演していただきたい。