俳句

鮎菓子をつつむ薄紙はなぐもり 草間時彦

山の鳥来てさわぎい*1る桜かな 山口青邨 *1:本当は旧かなわ行のい

鶯の渡る二の坂三の坂 水原春郎

花菜漬白湯に咲かせて一人の夜 野見山ひふみ

春霖や土蔵を出でしときにほふ 黒田杏子

公園の木立も人も月おぼろ 武原はん

春昼や蜆こぼるる京の路地 斎藤朗笛

京言葉耳におもねる夜半の春 大橋越央子

都踊の紅提灯に灯が入りぬ 宇田零雨

冴え返るもののひとつに夜の鼻 加藤楸邨

黒もんぺ干しあり春の雨降れり 中山純子

踊の出草履をぬらす春時雨 金子伊昔紅

髪乱す梅見の風の強かりし 町春草

うぐひすや空気ゆたかに裾濃なる 三橋敏雄

はるさめかなみだかあてなにじみをり 瀬戸内寂聴

春寒や乞食姿の出来上る 初代中村吉右衛門