積ん読本の素 その7(上)

中野翠さんのデビュー作『ウテナさん祝電です』(新潮文庫)読了。

先日読んだ<A HREF=http://www.bk1.co.jp/cgi-bin/srch/srch_detail.cgi/3be9eb04314cb0105a09?aid=p-mittei16105&bibid=02152052&volno=0000>『毎日一人はおもしろい人がいる』</A>(講談社)が、刺激となったためだ。
一時期、「週刊文春」「週刊新潮」「サンデー毎日」「週刊朝日」「朝日ジャーナル」「SPA!」のうちの2〜3誌を毎週欠かさずチェックしていた。
その中に「サンデー毎日」はほとんど毎週入っていた。
当時の「サンデー毎日」は、恐らく鳥越俊太郎さんか牧太郎さんが編集長だったのではないかと思う。
船戸与一佐々木譲といった、当時はまっていた冒険小説系の作家が、連載していたと思う。それが週刊誌をセレクトする時の、ひとつの基準だった。その割には「やっぱり単行本化されてからまとめて読もう」と、彼らの小説は読まなかったのだが。

しかし、なんといっても、サンデー毎日には「私の青空」という連載コラムがあって、それを読むのが楽しみだったのだ。中野翠という女性なのか男性なのか、もうひとつわからない書き手が、その週に起こったいろいろな事柄を、独特の視線で切り取っていくその手際が、とても好きだった。

いつの間にか、週刊誌チェックをすることもなくなり、中野翠という書き手とも、ご縁が薄くなっていた。しかし、時折、中野さんの本を、そうとはあまり意識せずに読んでいたのは、どこかで再び中野さんと再会するための、わたしの中での布石だったのかもしれないと、今になって思う。

この本は、中野さんが言う「原宿がおかしな街だったころ」に書かれた。そして、6年後である平成2年に文庫化されている。表面的には確かに、今では死語となってしまった、当時の流行風俗がてんこ盛りなのだが、その向こう側に、中野翠的エッセンスが詰まっていて、それほど古くさい感じは受けない。